京都大学 歴史研究会 ブログ

京都大学歴史研究会のブログです。 毎週の活動報告なんかをしていきたいと思っています。

寺社にまつわる日本史 南禅寺編

こんにちは。littleです。
今回は「寺社にまつわる日本史」の第2弾をお送りしようと思います。
今回取り上げるのは南禅寺です。

南禅寺

南禅寺のある土地には元々、後嵯峨天皇が造営した離宮・禅林寺殿がありました。後嵯峨天皇の子・亀山天皇はここで元寇の際に自戒・問法し、元寇を乗り切ります。そして元寇後に亀山天皇は落飾(出家)し、法皇となった後に禅林寺殿は南禅寺となりました。すなわち、南禅寺は勅願禅寺であり、非常に格式の高い禅寺であることがわかります。

このことを踏まえると、室町時代に五山・十刹の制が定められた際に南禅寺が別格として京都五山および鎌倉五山の上位に叙されたのは自然なことと思われます。しかしそのように上位におかれてはいるものの、南禅寺には僧録(官寺の管理及び住職などの任免を行う職)は置かれず、京都五山第二位に叙せられた相国寺に置かれました。これは一体なぜなのか。

五山・十刹の制度は、南宋のそれに倣い、禅寺の格式を定めたもので、鎌倉中期からその兆しが見え始めていました。建武の親政の頃には京都では南禅寺・大徳寺・建仁寺・東福寺、鎌倉では建長寺・円覚寺・浄智寺の各寺が五山の列にありました。ただし、その間の序列はまだ確定していません。
しかし、足利尊氏によって天竜寺が造営させると、改めて五山の列位が問題となり、この時は第一、建長寺・南禅寺、第二、円覚寺・天竜寺、第三、寿福寺、第四、建仁寺、第五、東福寺、と定められます。浄智寺は五山に准ずるものとされ、さらに浄妙寺以下の十刹の列位も定められました。この段階では、その列位は京都・鎌倉の禅寺が交ざった状態であり、その後追補や変動もありました。
ところが足利義満によって相国寺が造営されると、再び五山の列位が問題となり、再定されることとなります。義満としては自らが建立した相国寺を何としてでも五山の列位に入れたかったのですが、もうすでに京都における五山は埋まっています。そこで義満は一計を案じます。つまり、南禅寺を五山の上とし、第一、建長寺・天竜寺、第二、円覚寺・相国寺、第三、寿福寺・建仁寺、第四、浄智寺・東福寺、第五、浄妙寺・万寿寺という序列が決定したのです。
しかしこれでも満足しなかったのか、義満は後に天竜寺と相国寺の列位を入れ替え、相国寺を京都五山の第一位に叙することさえ行っています。(義満の死後元に戻される)

以上から、僧録が相国寺に置かれたことも併せて考えると、五山・十刹の制は由緒などを考慮したものではなく、義満の権勢に基づいた政治的な産物であると考えられます。
目の上のたんこぶである存在を隠居させて自分が権力を振るう、みたいな構図ですね。義満って腹黒いなあ、というのが個人的な感想です。

後に南禅寺は応仁の乱の戦火に巻き込まれ、伽藍が消失したのですが、再建はなかなか進みませんでした。しかし、桃山時代末期から江戸時代初期にかけて南禅寺から「黒衣の宰相」の異名を持つ金地院崇伝が出ると、状況は好転し南禅寺は復興されていきます。更に江戸幕府によって室町時代以来相国寺におかれていた僧録の座が南禅寺に移ります。南禅寺は政治の意味でも臨済宗の最上位についたのです。
しかし、禅宗の世界において五山の力はかつてほどはなく、大徳寺や妙心寺といった山隣派と呼ばれる一派が勢力を伸ばしていました。江戸幕府は五山・山隣派各々の独立を認めていたため、五山・南禅寺下に統括した禅宗の展開は成りませんでした。

絶頂期には権力を持てず、ようやく力を手にしたと思いきや五山自体が斜陽化していた南禅寺は、何とも不運ですね。

これで今回はおしまいです。最後でお付き合いいただき、ありがとうございました。

 参考文献
・山川出版社『詳説日本史研究』五味文彦・高埜利彦・鳥海靖編
・東京大学出版会『中世禅宗史の研究』今枝愛眞著
・淡交新社『京の禅寺』芳賀幸四郎・太田博太郎・玉村竹二著
・吉川弘文館『日本の名僧15 政界の導者 天海・崇伝』圭室文雄編
・臨済宗大本山 南禅寺 ホームページ http://www.nanzen.net/

 追伸
前回の記事に参考文献を載せることを失念していたので追加しました。申し訳ございません。
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テーマ:歴史 - ジャンル:学問・文化・芸術

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